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奈良地方裁判所 平成7年(わ)405号 判決

裁判所書記官

松岡美知代

本店所在地

奈良県北葛城郡王寺町久度二丁目二七番二三号

有限会社王寺清掃

代表者

芳村利一

本籍

奈良県北葛城郡王寺町久度二丁目三八三七番地の三

住居

奈良県北葛城郡王寺町久度二丁目二七番二三号

職業

会社役員 芳村利一

大正九年一月一三日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官水沼祐治出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社王寺清掃を罰金二五〇〇万円に、被告人芳村利一を懲役一年六月に処する。

被告人芳村利一に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人会社は、奈良県北葛城郡王寺町久度二丁目二七番二三号に本店を置き、し尿の処理及び清掃等を営む者、被告人芳村は、同社の代表取締役として業務全般を統括している者であるが、被告人芳村は、同社の業務に関し、法人税を免れようと企て、

第一(公訴事実第一)

平成三年二月一日から同四年一月三一日までの事業年度における実際の所得金額が六八七七万六一七六円で、これに対する法人税額が二四九一万八二〇〇円であるのに、売上の一部を除外するなどの行為により、その所得の一部を秘匿した上、同年三月三一日、奈良県大和高田市西町一番一五号所在の所轄葛城税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一三一万九九九三円で、これに対する法人税額が二五万六五〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右事業年度の法人税二四六六万一七〇〇円を免れ、

第二(公訴事実第二)

平成四年二月一日から同五年一月三一日までの事業年度における実際の所得金額が八五九三万七九三七円で、これに対する法人税額が三一四六万六三〇〇円であるのに、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿した上、同年三月二九日、前記葛城税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が二一〇万五二七二円で、これに対する法人税額が五八万九四〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右事業年度の法人税三〇八七万六九〇〇円を免れ、

第三(公訴事実第三)

平成五年二月一日から同六年一月三一日までの事業年度における実際の所得金額が九九六五万八八六一円で、これに対する法人税額が三六六一万一七〇〇円であるのに、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿した上、同年三月三一日、前記葛城税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が二五五万七八一五円で、これに対する法人税額が七一万五九〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右事業年度の法人税三五八九万五八〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

被告人会社代表者芳村の当公判における供述のほか、判示各事実(これに付記した各対応公訴事実)につき、検察官請求に係る証拠等関係カードの公訴事実の別に従い、同記載番号一ないし一〇、一三ないし二一、二三ないし五五、五八のとおりであるから、これを引用する。

(法令の適用)

判示各所為は法人税法一五九条一項(被告人会社については更に同法一六四条一項)に該当するところ、被告人会社については情状により同法一五九条二項を適用し、被告人芳村については所定刑中懲役刑を選択することとする。そして、以上は平成七年法律第九一号による改正前の刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人会社については同条四八条二項により合算した金額の範囲内において罰金二五〇〇万円に処し、被告人芳村については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の刑に法定の加重をした刑期の範囲内において懲役一年六月に処し、被告人芳村に対し同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、平成四年一月期から同六年一月期までの三事業年度において、被告人会社の実際の所得が二億五四三七万円余りであったのに、売上除外等の不正手段を用い、二億四八三八万円余りの所得を隠して、五九八万円余りの所得しか申告せず、九一四三万円余りを脱税した事犯である。被告人芳村によれば、公共工事による下水道の整備が進むと、被告人会社のし尿処理業が成り立たなくなるという将来の不安に加え、子供達のため少しでも多くの財産を残しておきたいとの思いから、本件の脱税行為に至ったというのである。しかし、ほ脱税額は右のとおり高額であり、しかも、通算ほ脱率は九八パーセントを超えているのであって、こうした脱税の規模などにかんがみても、また、租税制度の観点から考えても、犯情はよろしくない、もっとも、被告人会社は本税及び重加算税等の国税並びに地方税の納付を終えている上、被告人芳村においては本件のごとき反社会性、反倫理性を含む行為に及んだことを深く反省しているところである。そこで、その他の事情をも勘案し、刑の量定をした。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 鈴木正義)

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